そう言って彼女が冷蔵庫から取り出したのは、何か緑色の物が入ったプラスチック製の四角いパック。
中に水が入っているようで、緑色の物体が、ゆらゆらと揺れていた。
彼女:「これ」
彼女がパックのフタを開けると中には「枝豆」が入っていた。
ノブオ:「枝豆?」
彼女:「うん」
ノブオ:「えーっと・・・お嬢さん?枝豆以外に、何を食べているんですか?」
彼女:「え?枝豆だけだけど」
彼女は冷凍庫を開けた。
そこには冷凍の枝豆の袋、袋、袋・・・
ノブオ:「枝豆だけしか食べてないの?」
彼女:「あ、あと、お豆腐も食べるよ。近所の豆腐屋さんのお豆腐、美味しいんだよ!」
ノブオ:「は、はぁ・・・」
オレは呆気にとられていた。
ビールと枝豆。
まるで居酒屋で「とりあえず」頼むものだろう。
とりあえずって・・・とりあえずの後が何もないじゃないか。
ビールと枝豆で乾杯
彼女:「枝豆はね、水に入れて冷蔵庫で解凍するのが正解なの」
ノブオ:「なるほど、枝豆にも正解、不正解があるんだね」
彼女:「うん!」
夕方、オレ達はテーブルに向かい合って座り、彼女と缶ビールで乾杯して、さきほどのプラスチックパックから水だけ捨てた「枝豆」を食べていた。
二人とも、ビールはそのまま「缶ビール」で飲んでいた。
洒落たグラスに注ぐわけでもない。
彼女:「ごめんね。何もなくて。ビールも、いつもこのまま飲んでるから」
彼女はそう言って、「缶ビール」をあおった。
まぁ、別に何もなくても、枝豆だけあればいいか。
せっかく彼女が自宅に招き入れてくれたんだ。
オレにちょっとでも、心を開いてくれた証だろう。
次第に二人とも、酩酊してきた。
つづく
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