木製の重たいドアをガチャッと、開けると、店内の様子が見えた。
想像していた通り、薄暗い店内。
カウンターとボックス席。
客は常連と思しき男性が1人に、黒いワンピースを着たカウンターレディが2人。
まずは一般的に、よくあるスナックといったところだろう。
ママ「いら・・・しゃいませ?」
といいながら、こちらに近づいてきた。
ママ:「はじめて・・・ですよね」
ノブオ:「はい」
ママ:「当店は60分で3980円でビール、焼酎、ウイスキーの飲み放題ですけど、いかがいたしますか?」
ノブオ:「じゃあ、それで」
ノブオはママに促されて、カウンターの席に座った。
若い男性の席から1つ席を置いて、右隣りの席だ。
女性店員:「何がよろしいですか?」
ノブオ:「じゃあ、ビール」
女性店員がグラスにビールを注いでいる間、店内に短い沈黙が流れた。
女性店員:「ここははじめてですか?」
ノブオ:「はい。日曜日はどこもやってなくてね。開いてるところに入ったんだ」
若い男性:「日曜日はどこも休みですからねぇ・・・」
ノブオ:「そうなんですよね」
人懐っこい、なかなか気のよさそうな青年である。店の常連客なのだろう。
常連客を見れば、だいたいの店の雰囲気がよかるというものだ。
この店は、普通に、よさげな店のようだ。
何杯が飲んで、その青年ともある程度親しくなったころ、店のドアが開いた。
初見さんなのだろう。
ママがオレのときと同じように商品説明をして、いるのが聞こえる。
入ってきたのは、上下赤いパーカー姿の初老の男性。頭には少々毛がある。
ガニマタで店内に入ってきた。
若い男性の左、席を一つ置いて、そこに座った。
カウンターに客が3人。
日曜日の早い時間といったら、どこのスナックでもこんな感じの風景なのだろう。
人懐っこい青年が、赤いパーカーのおじさんに声をかけた。
若い男性:「お兄さん、はじめてなんですか?」
お兄さんって歳?、おそらくこの若い男性は、接客業か、それとも場慣れした人なのだろう。
でも、パーカーおじさんはお兄さんには見えないぞ。
パーカーおじさん:「そう。はじめて」
彼がそう言ったので、オレも話に割って入った。
ノブオ:「あ、オレも初めてっすよ。ここしかやってなかったんで」
パーカーおじさん、ちょっとオレと目を合わせたけど、無視。
パーカーおじさん:「日曜日どこもやってねぇからなぁ。サービス業なんだから、一斉に休む必要なんてねぇのによ」
と、ママに話しかけた。
ママ:「そうなんですよねぇ」
パーカーおじさん:「のんべぇはいつでも飲みたいってものさ。オレもちょっと前は若い衆連れて、毎日飲み歩いていたよ。寂れちまったな、最近は」
オレは思った。
ははーん。このタイプか。
一人で知らないスナックに入ってくるヤツなんて、大体、得体の知らないヤツだから、店員もちょっと緊張する。
どんな人間かを会話で探っていくのだけど、この人は、自ら自分が何者なのか、話したがっているようだ。
つづく
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