昼食後、オレは看護師さんに食後のうつの薬を貰おうとした。そういえば、救急車で運ばれてきたので、朝の抗うつ剤も飲んでいなかったのだ。
看護師さんがきたので、うつの薬をくださいと言うと、
「先生からの指示で、全ての薬の使用を禁止されています。なので、薬はお渡しできません」
「はい?」
オレは呆気にとられた。
「眠剤もですか?」
「はい」
なんということだ。
抗うつ剤はおろか、眠剤まで使用できないとは!
ここ数日間、部屋が暑すぎてほとんど寝れていないというのに、病院に来て、さらに眠剤を取り上げられるとは、眠るなんて絶望的。
さらに全身が吊っていて、動くこともままならない。
抗うつ剤も飲めないときた。
もうどうにでもなれ、の心境。
絶望感に苛まれながらベッドの中でウトウトしていたら、夕食の時間になった。
夕食も美味しくいただき、少しして消灯となった。
入院1日目の夜
相部屋の初老の叔父さんは、相変わらず、しきりにタンを吐き出している。
その音はしょうがないのだけれど、消灯してしばらくして、寝言を言い始めた。
しかも、英語。
who is 〇〇、That’s rightなど、簡単な英語の連続で、脈略がない。
気になって寝れないでいると、看護師が来て、
「〇〇さん、同じ部屋の人が寝れないでしょ、静かにしてください。ここ何処だかわかりますか?」
「あぁ・・・?ここ?ここ、カナダの部屋」
「違いますよ。ここ、病院。入院、入院しているんですよ」
「入院?・・・カナダじゃないのか?」
寝ぼけているのか、夢遊病なのかわからないが、毎日、こんなことが続くと思うと、眠剤があっても眠れやしないだろう。
悪夢だ・・・
案の定、一睡もできずに、オレは朝を迎えた。
つづきます。
コメント