ノブオ:「待っていてくれたんだ」
彼女:「当然でしょ。迷ってたら困るし」
彼女はガウン姿だった。
乱れたガウンから露になっている肌。なんとういう色気だろう。
こんな人がマンション内で歩いていたら、妻帯者でも声をかけたくなるに違いない。
彼女:「どうぞ」
初めて入る彼女の部屋。
オレはなんともいえない感情を抱き、靴を脱いだ。
彼女:「どうぞ、入って」
オレは彼女に促されるまま、彼女の家の居間に足を踏み入れた。
何もない部屋
彼女の部屋に入って、最初に思ったのは、「何もない」ということだ。
散らかっているから部屋に彼氏を入れないという女性は多いが、何もないから部屋に入れてくれないという女性は初めてだった。
衝撃だった。
まず、20畳近くある広いリビングにあるのは、小さな白いテーブルと、隅に置かれている24型くらいのTVのみ。TV台の上にTVがポツンと置かれていた。
あとは・・・
何もない。
本当に、何もないのだ。
彼女:「驚いた?」
ノブオ:「いや、まぁ、シンプルな暮らしだね」
彼女は何も言わず、居間に足を進めた。
彼女:「このマンションはね・・・」
彼女:「慰謝料としてくれたの。元カレがね」
オレは、この部屋に入る時からそう感じていた。
夜の女性は収入は良いけど、分譲マンションをローンで買える人なんて、なかなかいないのではないか?
しかも、このマンションはローンではなく、一括払いで購入済みだと言うのだ。
まぁ、彼女の元彼とオレを比べたってしょうがない。
オレは何もない、年収300万円程度の自営業者だ。
彼女:「座って」
彼女に促されるまま、オレは小さなテーブルに歩いていって、腰かけた。
「座って」と言われて、テーブルまでこんなにも歩いたのは初めてだ。
まるで別世界に来た感覚。大きな窓の外には、繁華街のビルを眼下に見下ろすぐらいの眺望が広がっていた。
彼女:「何もないんだけどサ、飲む?」
彼女が指さす先には、ビールの段ボールが山積みにされていた。
彼女:「あぁ、それじゃなくて、冷蔵庫に一杯、冷やしてあるから」
オレは立ち上がって、彼女の指さす冷蔵庫の中を見てみた。
ビール、ビール、ビール、ビール、ビール、ビール・・・
あとは、調味料とソースだけ。
彼女は何を食べているのだ?
ノブオ:「酒しかないじゃん」
彼女:「ううん、ちゃんと食料もあるよ」
と言って、冷蔵庫から取り出しものは・・・
つづく