2023年3月、私はオーストラリア・アデレードで暮らしていました。当時、OSHC(Out of School Hour Care)という学童のようなところで働いており、勤務開始の午前7時に合わせて通勤していました。まだ肌寒く、日が昇るのも遅め。そんなある日の朝、いつものように車で仕事へ向かっている途中で、人生初の交通事故に遭ってしまいました。
まだ空が薄暗く、通勤ラッシュ前の静かな道。信号が赤に変わりそうだったので、私は減速して止まりました。その瞬間、「ドンッ!」という大きな衝撃音。後ろから車に追突されたのです。
一瞬、何が起こったのか分からず、心臓がドキドキ。車の後部は完全に潰れ、バックミラーで確認すると、後ろのトラックがぴったりと車体にくっついていました。運転席に座ったまま、何秒か動けなかったのを覚えています。
幸いにも私は無傷。ですが、事故のショックと初めての経験に、頭は真っ白。何をすべきか全くわかりませんでした。
保険未加入?相手の態度に戸惑う
相手の運転手は20代前半(もっと若いかも?)と思われる若い男性。車から降りてきて、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれました。その時点では、怒りよりも驚きと混乱が先で、私も「大丈夫です」と返したものの、心は全然落ち着いていませんでした。
やりとりの中で、彼が車の保険に入っていないことが分かりました。しかも、「保険は使わないでほしい」「何とか直接で済ませられないか」と言われて、さらに動揺。事故対応は基本的に保険会社を通して行うものだと思っていた私は、どうすべきかわからなくなってしまいました。
今思えば、ここでしっかりとした情報交換をすべきだったのですが、私が聞き取れたのは彼のファーストネームと電話番号だけ。ナンバープレートも写真に撮らず、免許証の確認もせず、完全に対応ミスでした。
パニックと未経験が招いた不安
「事故に遭ったらすぐ警察に連絡すべきなのか?」「保険会社にはどう連絡する?」「相手が無保険だったら、補償はどうなるの?」――そんな疑問と不安が一気に押し寄せてきました。
その日は仕事にはそのまま向かいました。ちょうど大学院の授業がなかった日だったので、昼休みに保険会社に連絡を入れることができました。すると、担当者から「相手の情報が不十分なため、対応が難しい」と言われてしまいました。
焦った私は、事故相手の青年にすぐ連絡を取りました。ですが、電話もテキストメッセージもまったく反応なし。数日間、時間を見つけて何度も連絡を試みましたが、1週間以上ずっと無視され続けました。
不安と苛立ちを感じながら警察署にも相談に行ってみましたが、「事故現場で相手の詳細情報を確認しなかったあなたにも非がある」と言われ、特に助けてもらえることはありませんでした。
どうしても納得がいかず、自分で南オーストラリア州の交通規制などを調べ、「交通事故に遭った当事者は、その場でお互いに情報を交換する義務がある」と明記されている条文を発見。それをスクリーンショットして、事故相手にメッセージで送りました。
すると、即座に返事があり、相手のフルネームやナンバープレートなどの必要情報を送ってもらうことができました。事故後の精神的ストレスに加えて、とても疲れるやりとりでした。
保険に入っていて本当によかった!
今回の事故を通して、「保険に入っていて本当によかった」と心から思いました。
相手は無保険、こちらは情報不足というなかなか厄介な状況の中でも、私の保険会社はとても頼りになりました。事故相手とのやりとりもすべて代行してくれ、私はその後ほとんどやり取りに関わる必要がありませんでした。
車は結局「全損扱い(廃車)」になってしまったのですが、その連絡もスムーズで、保険金は比較的早く振り込まれました。 さらに、事故後すぐに代車を手配してくれたおかげで、仕事にも生活にも大きな支障が出ることはありませんでした。
当初は「毎月の保険代の負担が痛いな…」と思っていましたが、それでも事故処理を一から全部自分でやることを考えたら、保険があることでどれだけ安心感が違うかを実感しました。
事故後に学んだこと
この経験から、私が学んだことは以下の通りです:
- 事故直後はとにかく冷静になること:まずは深呼吸。怪我がなければ車外に出て安全な場所へ。
- 相手の情報は必ず確認・記録すること:
- 名前
- 電話番号
- ナンバープレート
- 免許証の写真
- 保険会社の情報など
- 現場の写真を撮る:車の損傷状況、周囲の道路の様子など、後で証拠になります。
- 警察への報告が必要な場合もある:人身事故や無保険車との事故など、状況によっては警察への連絡が必要。
- 自分の加入保険を理解しておく:補償内容や連絡先をあらかじめ把握しておくと安心です。
最後に
海外での運転は、日本と違うルールや環境に不安を感じることもあります。特に事故となると、言語や保険制度の違いがさらに不安を増やします。
私は今回の事故で「無傷で済んだこと」が何よりも幸運でした。そして、失敗も含めてすべてが貴重な経験だったと感じています。
同じように海外で暮らしている方や、これからオーストラリアで運転する予定のある方にとって、この体験談が少しでも役に立てば嬉しいです。事故は誰にでも起こり得るもの。だからこそ、「もしものとき」に備えて、心構えと知識を持っておくことが大切だと、心から思います。
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