「まだ話せないけど、何か伝えようとしてる気がする…」
赤ちゃんや幼児とのやりとりで、そんな瞬間を感じたことはありませんか?
近年、赤ちゃんの発語前のコミュニケーション手段として注目されている「ベビーサイン」や、発達に支援が必要な子どものことばをサポートする「キーワードサイン」が、オーストラリアの育児・教育現場で広く活用されています。
どちらも“手話をベースにした方法”ですが、
対象や目的、使い方には大きな違いがあります。
この記事では、現役スピーチセラピストの視点から、
- ベビーサインとキーワードサインって何が違うの?
- それぞれどんな子に向いているの?
- どんなふうに使えばいいの?
といった疑問を、わかりやすく解説していきます。
この記事はこんな人におすすめ
- 赤ちゃんとの関わりに不安がある方
- 言葉の発達がゆっくりな子にできることを探している方
- ベビーサインやキーワードサインの違いを知りたい方
- 育児に「ことばの視点」を取り入れたい方
🤱 ベビーサイン(Baby Sign)とは?
概要
赤ちゃんがことばを話し始める前に、ジェスチャー(主にASLやAuslanなどの手話に基づいた動作)を使って意思を伝える方法です。
対象
- 主に0〜2歳の定型発達の乳児
- まだ話せないけど「伝えたい」気持ちが強くなってきた頃の赤ちゃん
目的
- 泣かずに伝えられる手段を持たせる
- 親子のコミュニケーションを円滑に
- 発語前の「ことばの準備」として語彙理解を深める
特徴
- 親や保育者が日常の語彙(もっと、飲む、ママなど)にサインを添える
- 学術的な評価というより、家庭や育児法として人気を集める
- 一般的に発語の発達を遅らせることはないとされています
🧒 キーワードサイン(Key Word Sign)とは?
概要
話し言葉と一緒に“キーワードだけ”を手話で表すコミュニケーション支援方法。
オーストラリアでは「Key Word Sign Australia」が推進しており、Auslan(オーストラリア手話)をもとにしたサインを使います。
対象
- 言語発達に遅れや困難がある子どもや成人(例:自閉症、知的障害、言語障害など)
- AAC(補助代替コミュニケーション)の一つとしても活用
目的
- 言語の理解・表出両方のサポート
- 発話と併用することで、聴覚+視覚両方からの理解支援
- 家族や支援者との一貫したコミュニケーション手段を作る
特徴
- すべての単語をサインで表すのではなく、意味を伝える「キーワード」のみを手話で補助
- 例:「Do you want more drink?」→「want」「more」「drink」だけをサイン
- 個別の学習やトレーニングが必要なことも
ベビーサインとキーワードサインの違いまとめ
項目 | ベビーサイン | キーワードサイン |
---|---|---|
対象年齢・発達 | 0〜2歳の定型発達の赤ちゃん | 発達障害・言語遅れのある子や成人 |
目的 | 発語前の意思伝達・親子の絆形成 | 理解・表出支援、AACとしての活用 |
手法の特徴 | 日常の語彙を親子で楽しく使う | 重要語だけサインし、発話と併用 |
サインの出典 | ASLやAuslanベースだが柔軟 | 基本的にAuslanに基づく正確な手話 |
導入の難易度 | 比較的簡単(家庭でも導入しやすい) | 専門家の支援や練習が必要な場合あり |
🎓 スピーチセラピストからのポイント
- ベビーサインは「楽しい育児のツール」として
- キーワードサインは「支援が必要な方の生活に欠かせないサポート手段」
両者の目的や対象を理解して使い分けることが大切です。
キーワードサイン(Key Word Sign)は、スピーチセラピーでも広く用いられているエビデンスに基づいたアプローチです。発語が困難な子どもや成人に対して、視覚的な手がかりを加えることで理解と表出の両面をサポートします。発語の促進や行動の安定、相互コミュニケーションの向上に効果があることが研究で示されています。
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